「夜中、寝返りのたびに肩がズキッと痛んで目が覚める」「整形外科で四十肩・五十肩と言われ、リハビリにも通っているのに、なかなか良くならない」——そんなご相談を、ネイチャーボディ鍼灸整体院では本当に多くいただきます。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、ただ「肩を大きく回せば治る」ものではありません。実は、痛みが強い時期に無理にストレッチをすると、かえって炎症が長引き、夜間痛が悪化することもあります。大切なのは「いまの自分はどのステージにいるのか」を見極めて、その時期に合った動かし方を選ぶことです。
この記事では、施術21年・のべ16万回の臨床経験から見えてきた「夜間痛をやわらげるための動かし方」と「やってはいけない動かし方」、そしてリハビリでなかなか改善しない方が次の一手を考えるためのヒントをまとめました。
この記事でわかること
- 四十肩・五十肩の「病理」と「機能的問題」の切り分け方
- 夜間痛が起こる仕組みと、寝るときの楽な姿勢
- 炎症期・拘縮期・回復期それぞれで適したストレッチ
- 整形外科のリハビリでなかなか改善しない方が見直すべき視点
- 受診を急ぐべき「赤旗症状」のチェックリスト
四十肩・五十肩とは何か——病理と機能障害の切り分け
四十肩・五十肩は医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩関節を構成する組織(関節包・腱板・靭帯・滑液包など)に炎症や癒着が生じ、痛みと可動域制限を引き起こす状態の総称です。40〜60代に多く発症し、女性にやや多い傾向があります。
まず「病理」か「機能的問題」かを見極める
臨床現場で最も大切なのは、肩の痛みが「組織が損傷している病理」によるものか、「関節や周辺組織の動きが制限されている機能的問題」によるものかを切り分けることです。
| 区分 | 主な状態 | 第一選択 |
|---|---|---|
| 病理 | 腱板の損傷・断裂、骨折、脱臼、石灰沈着 | 整形外科(手術や薬物治療の検討) |
| 機能的問題 | 関節包の硬さ、肩甲骨・胸郭の動きの低下、姿勢の崩れ | リハビリ・徒手療法 |
特に腱板の断裂は、自然に元通り「繋がる」ことはなく、必要に応じて手術で繋ぐ判断が求められます。これは整形外科の超音波検査やMRIで判明します。四十肩・五十肩と感じたら、まず整形外科で画像検査を受けて病理の有無を確認することが大前提です。
リハビリで変わらない方が多い現状
整形外科で「四十肩ですね、リハビリで様子を見ましょう」と言われ、数ヶ月通ったけれど思うような変化が出ない——この経験をされる方は本当に多いです。実際、ネイチャーボディ鍼灸整体院にお越しになる肩のお悩みの患者さんも、こうした「次の一手を探している」方が大半を占めます。
病理が見つからない場合、症状の正体は「機能的問題」であることがほとんどです。ここに徒手療法が介入できる余地は十分にあります。
なぜ夜になると肩が痛むのか
四十肩・五十肩で最もつらいと訴えられるのが「夜間痛」です。日中はそれほどでもないのに、横になると痛みが強まる——この現象にはいくつかの理由が重なっています。
- 血流とリンパの停滞:横になることで肩周辺の循環が落ち、炎症産物が滞留しやすくなります。
- 関節内圧の上昇:仰向けで腕の重みが関節包を引っ張り、内圧が高まると痛みが増します。
- 交感神経の鎮静による「痛みの自覚化」:日中の刺激が減ることで、痛みの信号が脳に届きやすくなります。
- 側臥位での圧迫:痛い肩を下にしても、上にしても、腕の角度次第で関節包が伸ばされ刺激になります。
寝るときに楽な姿勢の作り方
- 仰向け+脇にバスタオル:脇の下に薄く畳んだバスタオルを挟み、腕を体からわずかに離す。腕の重みで関節包が引かれるのを防ぎます。
- 肘の下にクッション:肘を心臓よりやや高くすることで循環を保ち、夜間のうっ滞をやわらげます。
- 横向きなら痛くない側を下に:痛い肩を上にし、胸の前に抱き枕を置いて腕を載せます。腕がだらりと前に落ちないようにするのがコツです。
「寝る姿勢を整えるだけで、夜間痛がやわらぎ眠れる時間が長くなった」という声は少なくありません。動かす前に、まず休ませ方を見直すことが第一歩です。
原因タイプ別の分類(5タイプ)
四十肩・五十肩は「肩そのもの」だけの問題ではないことが多く、背景の要因を見極めることでセルフケアの選び方が変わります。臨床の現場で多く出会う代表的な5タイプをご紹介します。
タイプ①:炎症期(急性期)タイプ
発症から数週間〜3ヶ月程度。じっとしていてもズキズキ痛み、夜間痛が強い時期。腕を少し動かしただけで激痛が走ることもあります。この時期は「動かす」よりも「炎症を鎮める」ことが優先です。
タイプ②:拘縮期(凍結期)タイプ
発症3〜9ヶ月頃。安静時の激しい痛みは落ち着いてきますが、関節包が硬くなり、腕が上がらない・後ろに回らないといった可動域制限が前面に出ます。徒手療法とセルフケアの介入余地が最も大きい時期です。
タイプ③:胸郭・肩甲骨タイプ
肩関節そのものより、胸郭(肋骨の動き)や肩甲骨・鎖骨の動きが落ちて、肩関節に過剰な負担が集中しているタイプ。デスクワーク中心、猫背気味の方に多く見られます。肩だけストレッチしても変わらない場合、ここを疑います。
タイプ④:外傷由来タイプ
転倒・手をついた・肩から落ちた・打撲などのきっかけがあり、それ以来動きが悪くなったケース。各関節の動きが部分的に固まり、それが連鎖して四十肩のような状態を作ります。まず整形外科で骨折・脱臼・腱板損傷の有無を確認した上で、徒手で動きを取り戻していく必要があります。
タイプ⑤:内臓関連タイプ(補完医療の視点)
補完医療の視点では、内臓を包む膜(ファシア)が周囲組織と繋がっており、その牽引が肩の動きに影響している可能性が指摘されています。臨床上、右肩は肝臓・胆のう(飲酒や脂っこい・甘いものの過剰)、左肩は胃・食道との関連が話題になることがあります。あくまで補完的な視点であり、気になる内臓症状がある方は必ず内科などの医療機関での検査をご検討ください。
タイプ別のセルフケア・対処
ここからが本題です。「とにかく動かせばいい」ではなく、自分のタイプ・ステージに合った動かし方を選ぶことが、夜間痛を悪化させないコツです。
タイプ①:炎症期のセルフケア
このステージで最も大切なのは「無理に動かさない勇気」です。ぐいぐい伸ばすストレッチは禁物です。
- 振り子運動(コッドマン体操)の超ライト版:痛くない側の手をテーブルに置き、上体を軽く前傾。痛い側の腕を脱力させ、自重で前後・左右にゆらゆら揺らす(1分以内)。決して大きく振り回さない。
- ホットパックよりまず冷却を検討:熱感・拍動痛が強い時期は、保冷剤をタオルで包んで10分程度。「温めると悪化する」場合は炎症が強いサインです。
- 就寝時の腕の位置を整える:前述の「脇にバスタオル」を必ず実施。
炎症期のうちは、まずは整形外科での薬物治療と並行して「安静と適切なポジショニング」を優先してください。
タイプ②:拘縮期のセルフケア
痛みが落ち着いてきたら、いよいよ可動域を取り戻すフェーズです。ただし、無痛で動ける範囲を少しずつ広げていくのが鉄則です。
- テーブルスライド:椅子に座り、テーブルにタオルを敷いてその上に手を置く。上体を前に倒しながら、手を前方へすべらせる。痛みが出る手前で5秒キープ。10回。
- 壁這い(ウォール・ウォーク):壁に向かって立ち、指で壁を登るように少しずつ上へ。届く高さを毎日少しずつ更新。痛みではなく「張り」を感じる位置でストップ。
- タオル背中ストレッチ:細長いタオルの両端を背中の上下で持ち、健側の手でゆっくり上に引き上げ、患側の手を上に誘導。痛みが強い場合は無理せず可動範囲内で。
ここで強調したいのは、「可動域回復はセルフケアより先に施術で痛みを抜くべき」ということです。痛くてストレッチができない状態で頑張ると、力みと防御反応で逆に硬さが増します。施術で痛みと可動域を一段引き上げてから、セルフケアで維持・拡大していくのが、臨床経験から見て最も近道です。
タイプ③:胸郭・肩甲骨タイプのセルフケア
- 胸椎の伸展ストレッチ:丸めたバスタオルを背中の真ん中(肩甲骨の高さ)に横向きに置いて仰向け。両手を頭の後ろで組み、息を吐きながら胸を開く。30秒。
- 肩甲骨の上下・前後運動:座位で肩をすくめ→下ろす、前に出す→後ろに引く、を各10回ずつ。痛みのある肩関節は「動かさず」、肩甲骨だけを意識。
- 呼吸で肋骨を広げる:両手を肋骨の側面に当て、息を吸って手のひらを押し広げるように胸を膨らませる。10呼吸。
タイプ④:外傷由来タイプの対処
まずは必ず整形外科で骨折・脱臼・腱板損傷の有無を確認してください。画像上問題なしと診断された後で、各関節の動きを丁寧に取り戻していきます。セルフでは限界があるため、徒手療法での評価と矯正を組み合わせることをおすすめします。
タイプ⑤:内臓関連タイプの対処
食生活(飲酒・脂質・糖質の過剰)の見直し、睡眠とストレス管理が基本です。気になる内臓症状(みぞおちの違和感、右脇腹の張り、慢性的な胃もたれなど)がある方は、内科で適切な検査を受けてください。徒手療法は「補完医療」の位置づけでお考えください。
見逃してはいけない赤旗症状(受診の目安)
以下のサインが一つでもあれば、自己判断でストレッチを続けず、整形外科などの専門医を受診してください。
- 転倒・打撲などのきっかけの後から動かなくなった
- 腕に明らかな力が入らない、コップを持てない
- 肩を動かさなくても、安静時の激しい痛みが何週間も続く
- 夜間痛で眠れない状態が長期化している
- 腕や手のしびれ、感覚の鈍さを伴う
- 発熱、肩の急激な腫れ・熱感・発赤がある
- 体重減少や全身倦怠感を伴う
- 反対側の肩や他の関節にも同時に強い痛みが出ている
特に「外傷後」「しびれ・脱力」「発熱・全身症状」を伴うものは、徒手療法・鍼灸の範囲を超えるケースです。専門医への受診もご検討ください。
ネイチャーボディ鍼灸整体院のアプローチ
ネイチャーボディ鍼灸整体院では、四十肩・五十肩の患者さんに対して、「整形外科で四十肩・五十肩と言われ、リハビリでなかなか改善しない方こそ徒手療法を」というメッセージを軸にご対応しています。
多関節としての肩を、構造的に見る
肩は単一の関節ではなく、脊柱・胸郭・肩甲骨・鎖骨・肩甲上腕関節が連携して動く「多関節の集合体」です。多くの方が、これらを一つひとつ徒手で機能障害評価される機会を持たないまま、リハビリや投薬を受けてこられます。
院では、徒手療法の検査で関節ごとの動きを丁寧に確認し、機能障害が見つかった部位に対して構造的アプローチで施術します。施術ごとに可動域が広がっていくことを一つの大事な指標として共有しています。
「まず痛みを抜き、可動域を広げてから、セルフケア」
振り子運動やストレッチなどのセルフケアは、可動域が一定以上に戻ってからでないと、痛くてそもそも実施できません。施術で痛みを抜き可動域を広げ、ご自宅でセルフケアを積み重ねていただく——この順番が、夜間痛をやわらげ、日常を取り戻すための現実的な道筋です。
整形外科の診断・リハビリを受けても3ヶ月ほどで明確な変化を感じられない場合は、徒手療法の介入余地があるケースが多いので、早めにご相談いただくことをおすすめします。
施術者について
院長・山崎由浩は、国家資格を保持し、施術歴21年・のべ16万回の臨床経験を持ちます。現在はフランスの徒手療法専門学校で国際基準の徒手療法(D.O.取得を目標)を学んでおり、慢性領域の専門家として、構造的アプローチを軸に診させていただいています。
自宅でできるセルフケア手順
痛みが強い炎症期を抜け、医師から「動かしてOK」と許可が出た方向けに、自宅で安全に取り組める基本ルーティンをまとめます。1日2回(朝・入浴後)を目安に。
ステップ1:温めて循環を上げる(3分)
蒸しタオルや使い捨てカイロをタオルで包み、肩から肩甲骨周りを温める。熱感・拍動痛が強い時期は省略。
ステップ2:振り子運動(1〜2分)
痛くない側の手をテーブルに置き、上体を前傾。痛い側の腕を脱力させて自重でゆらゆら。前後・左右・小さな円を、各20回ずつ。痛みが出ない範囲で。
ステップ3:テーブルスライド(10回)
椅子に座って手をテーブルに置き、上体を前に倒しながら手を前へすべらせる。痛みの手前で5秒キープ。
ステップ4:胸椎伸展ストレッチ(30秒)
丸めたバスタオルを肩甲骨の高さに置いて仰向けになり、胸を開く。深呼吸を意識。
ステップ5:肩甲骨アイソレーション(各10回)
肩関節は動かさず、肩甲骨だけを上下・前後に動かす。
ステップ6:就寝前のポジショニング
脇の下にバスタオル、肘の下にクッション。横向きで寝る場合は痛くない側を下にし、胸の前に抱き枕を。
セルフケアの大原則は「痛みを我慢して伸ばさない」「呼吸を止めない」「毎日少しずつ」の3つです。
まとめ
- 四十肩・五十肩は、まず整形外科で「病理」か「機能的問題」かを切り分けることが大前提。
- 夜間痛には「動かす」前に「休ませ方(寝る姿勢)」を整えることが効果的。
- 炎症期は安静、拘縮期は可動域回復、それぞれのステージで適したストレッチが異なる。
- 肩は「脊柱・胸郭・肩甲骨・鎖骨・肩甲上腕関節」の連携。肩だけ伸ばしても変わらないケースは構造的な評価が必要。
- 整形外科のリハビリで3ヶ月変化が出ない方は、徒手療法の介入余地があるケースが多い。
FAQ
Q1. 四十肩と五十肩は違うものですか?
医学的にはほぼ同じ「肩関節周囲炎」を指し、発症年齢の違いで呼び分けられているだけです。病態に大きな差はありません。
Q2. 痛くても無理に動かしたほうが早く治りますか?
炎症期に痛みを我慢して動かすと、かえって炎症が長引くことがあります。痛みの強い時期は安静と適切なポジショニング、拘縮期に入ってから可動域回復、というステージごとの判断が大切です。自己判断が難しい場合は専門家に相談してください。
Q3. 夜間痛で眠れません。市販の鎮痛薬は飲んでも大丈夫ですか?
用法・用量を守れば一時的な使用は選択肢となりますが、長期的な使用は必ず医師・薬剤師にご相談ください。並行して、寝る姿勢の見直しと炎症の鎮静化を図ることが本筋です。
Q4. お風呂で温めるのは良いですか?冷やすべきですか?
「温めると楽になる」なら温め、「温めると拍動痛が増す」なら炎症が強い時期と考え冷却を優先します。自分の体の反応を見て選んでください。
Q5. リハビリに通っても変化がありません。やめてもいいですか?
自己判断で中断する前に、まず主治医に経過を伝えてください。その上で、徒手療法など別のアプローチを補完的に組み合わせる選択肢があります。3ヶ月変化が見られない場合は早めにご相談を。
Q6. ストレッチで「ピキッ」と痛みが走ったらどうすればいいですか?
すぐにそのストレッチを中止し、その日のセルフケアは一旦お休みください。数日経っても痛みが引かない、悪化する場合は整形外科を受診してください。
Q7. 反対側の肩も痛くなってきました。よくあることですか?
四十肩・五十肩の経過中に反対側にも症状が出ることはあります。ただし、両側同時の強い痛みや他関節の痛みを伴う場合は、別の疾患の可能性もあるため、整形外科や内科の受診をご検討ください。
Q8. 肩こりとは何が違うのですか?
肩こりは主に首〜肩の筋肉の張り感が中心ですが、四十肩・五十肩は肩関節そのものの可動域制限と痛みが特徴です。腕が上がらない、後ろに回せない、夜間痛があるといった症状は四十肩・五十肩を疑うサインです。
Q9. ゴルフやテニスなどのスポーツは続けてもいいですか?
炎症期は中止が安全です。拘縮期以降も、痛みが出る動作は避け、医師や施術者と相談しながら徐々に復帰してください。
Q10. 自然に治ると聞きました。何もしなくていいですか?
多くは時間とともに改善する傾向がありますが、放置すると拘縮が強く残り、可動域が戻りきらないケースもあります。日常の動作(髪を結ぶ、背中に手を回す等)に困りごとがあるなら、適切な介入で回復をサポートする価値は十分にあります。
参考にした研究・エビデンス
- 肩関節周囲炎の自然経過と段階分類(炎症期・拘縮期・回復期)に関する整形外科領域の一般的知見
- 関節包の硬さと可動域制限に対する徒手療法・運動療法の有効性に関するレビュー
- 胸椎可動性と肩関節機能の関連を扱う運動学的研究
- 夜間痛の発症メカニズム(関節内圧・循環)に関する臨床報告
※本記事は施術21年・のべ16万回の臨床経験を骨格に、一般的な医学知見で補強しています。個別の症状については、必ず整形外科などの専門医の診断を前提にご判断ください。
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